storyあらすじ
ロックを愛するギタリスト、デューイ・フィンは、 バンドをクビになり家賃にも困る崖っぷち。 そんな彼が同居人宛ての代用教員の仕事を横取りし、名門私立学校へ潜り込む。そこで出会った子どもたちの才能に気 づいたデューイは、彼らと密かにロックバンドを結成。バンドバトル出場を目指し、教室に爆音のロックを鳴り響かせる。
ロックを愛するギタリスト、デューイ・フィンは、 バンドをクビになり家賃にも困る崖っぷち。 そんな彼が同居人宛ての代用教員の仕事を横取りし、名門私立学校へ潜り込む。そこで出会った子どもたちの才能に気 づいたデューイは、彼らと密かにロックバンドを結成。バンドバトル出場を目指し、教室に爆音のロックを鳴り響かせる。
映画は、退屈な夜のコンビニ前にも、名門小学校の教室にも、突然やってくる。会話のなかに青春の焦りを刻み、音楽のなかに人生を変える衝動を鳴らす。 リチャード・リンクレイターはいつも、横道にそれた時間と人々のなかに、かけがえのない映画を見出してきた。ジャン=リュック・ゴダール『勝手にしやがれ』の制作現場を描く最新作『ヌーヴェルヴァーグ』公開を記念し、リンクレイタ ーのフィルモグラフィから対照的な2本を期間限定上映。 若者たちの出口のない夜を描く『サバービア』、そしてロックが教室を解放する痛快作『スクール・オブ・ロック』。 "新しい波” は、いつだって道を少しそれた先から始まる!
リチャード・リンクレイターは、1960年アメリカ・テキサス州ヒューストン生まれの映画監督・脚本家・プロデューサー。1980年代にオースティンへ移り、スーパー8カメラで映画制作を始め、1985年にはオースティン映画協会の設立に関わった。ハリウッドの大作映画とは異なる場所から、アメリカ・インディペンデント映画の重要な流れを築いてきた作家である。 初期の代表作『スラッカー』(原題:Slacker)は、オースティンの街に生きる若者や風変わりな人々を断片的に描き、リンクレイターの名を広く知らしめた。続く『バッド・チューニング』では、1970年代の高校生たちの一日を群像劇として描き、青春映画の作家としても評価を高めた。映画.comでは、『Slacker』を「91」、『バッド・チューニング』を「93」として紹介している。 国際的な評価を確立したのが、イーサン・ホークとジュリー・デルピーが主演した『恋人までの距離(ディスタンス)』に始まる“ビフォア”三部作である。同作はのちに『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)』としても知られ、『ビフォア・サンセット』『ビフォア・ミッドナイト』へと続いた。男女の会話と時間の経過を軸に、出会い、再会、人生の変化を描くこのシリーズは、リンクレイターの作風を象徴する作品群となっている。 その後も、哲学的な対話をアニメーション表現で描いた『ウェイキング・ライフ』、フィリップ・K・ディック原作の『スキャナー・ダークリー』、ジャック・ブラック主演の音楽コメディ『スクール・オブ・ロック』、実話をもとにしたブラックコメディ『バーニー みんなが愛した殺人者』など、ジャンルを横断しながら作品を発表してきた。商業映画、インディペンデント映画、アニメーション、青春映画、会話劇を自在に行き来する幅広さも、リンクレイターの大きな特徴である。
2014年の『6才のボクが、大人になるまで。』では、同じ俳優たちを長期間にわたって撮影し、少年と家族の成長を実際の時間の流れと重ねて描いた。同作はリンクレイターの代表作の一つとされ、時間そのものを映画の構造に取り込む彼の作家的関心を、最も明確に示した作品でもある。 近年も、『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』、『アポロ10号 1/2 宇宙時代のアドベンチャー』、『ヒットマン』などを手がけ、さらに『ブルームーン』では作詞家ロレンツ・ハートを、『ヌーヴェルヴァーグ』ではジャン=リュック・ゴダールの『勝手にしやがれ』をめぐる映画史的題材を扱っている。『ブルームーン』については、日本の公式情報でもロレンツ・ハートを描く作品として紹介されている。 リンクレイターの映画は、劇的な事件よりも、会話、時間、記憶、偶然の出会い、人生の選択に焦点を当てることが多い。若者の一日、恋人たちの長い対話、家族の成長、映画や音楽をめぐる創作の現場——題材は多岐にわたるが、その根底には、日常のささやかな瞬間の積み重ねから人生を見つめる一貫したまなざしがある。
本作におけるロックは、音楽ジャンルであると同時に、規律や周囲の期待から少しはみ出すためのエネルギーとして描かれる。デューイの授業を通して、子どもたちは演奏や歌に向き合い、自分の感情や個性を表に出していく。学校の枠組みの中では見えにくかった声が、バンドという場で少しずつ響き始める。
規律や成績を重んじる学校の中で、デューイのロック授業は別の価値観を持ち込む。演奏や歌だけでなく、衣装、照明、マネジメントといった役割を通して、子どもたちは点数では測れない力を発揮していく。学校的な「優秀さ」から少し離れた場所で、それぞれの個性が見え始める。
本作では、ロックが自由や反抗の感覚をまといながらも、バンド・バトルという競争の場へと向かっていく。デューイと子どもたちの演奏は、自己表現であると同時に、ステージ、審査、勝敗、観客の反応にさらされるものでもある。反骨のエネルギーがショーとして成立していく過程に、ロック文化と商業性の関係を読み取ることができる。
本作は、型破りな大人が子どもたちの可能性を引き出していく、親しみやすい成長物語の形を持っている。だが、デューイは最後まで完全な理想の教師になるわけではない。子どもたちの変化も、勝利や成功だけに集約されず、演奏すること、役割を得ること、自分を表現することの喜びとして描かれる。笑いと高揚感の中に、リンクレイターらしい人物への距離感が残っている。
2003年 / アメリカ / カラー / 109分